A feeling of a partner
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「…ここでいいだろ。」
天国の腕を引っ張り沢松がたどり着いたのは屋上だった。
よく二人でいた場所。
「さて。天国…腹割って話そうか。」
沢松は振り向きざまに言うとそのまま腰を下ろした。そして天国にも座れよ、と指を下に指す
だが、天国は沢松の言うことにこたえようとせずに、視線をそむけた。
連れてくる間も押し黙ったままだったな、と沢松は思いながら。
天国の腕をつかんで、強引に座らせた。
「痛っ…。」
「オレのほう見ろよ、天国。
言ってんだろ。しっかり話し合おうじゃねえか。
今までのオレ達と、それからこれからのことをな。」
沢松の眼は、天国から見れば怒りに満ちているようで。
天国は一瞬怯えたように体を震わすと、またうつむく。
内心沢松は驚いていた。
こんな弱弱しい天国を、今まで見たことがない。
いや、自分が見つけていなかっただけなのか…これが本当の…猿野天国。
沢松はただ天国の背を見続けていたと思っていた。
だが天国は前にいたんじゃない。
むしろ自分の横をいてもいいのか聞きながら。
いてもいいのか、沢松と天国自身に問い続けていたのだ。
それをずっと、沢松は気付けなかった。
それに今ようやく気付いたのだ。
そして、初めて知る今の天国をどう思っているかも自覚していた。
「なあ、天国。」
「…もう…いいって…。」
少し声を和らげて聞くと、天国は拒絶の言葉とともに首を振り出した。
「いい?何がいいんだよ。言ってみろ。」
「…嫌なんだよ…沢松が、オレを嫌いだって…聞くのは…。」
「…嫌いだなんて言ってねえじゃねえか。」
「ムカつくって…ムカついて仕方ねえっていっただろ…?友達じゃねえって…。」
ああ、こいつはオレの言葉にホントに傷ついてたんだな。
そう実感すると、申し訳なさとともに。
嬉しくて仕方なかった。
(俺は、ここまでこいつの中に存在してるんだな。)
そう思うと、たまらなくなった。
気づけば沢松は天国を抱きしめていた。
「…!!」
腕の中の天国が身体を強張らせるのが分かった。
こんなに怖がりのくせに、ずっと強がって。
オレにすら弱みを見せずに、ただがんばってがんばってがんばって。
(苦しかったよな。)
「いいから、聞け天国。」
「…なに、を…。」
驚きと戸惑いの混じった声が小さく響いた。
「オレだって、お前の傍にいたいんだよ。
お前と同じだ。」
「………え……?」
こわばった体から少し力が抜ける。
「あんな風に言っちまったのは…これもお前と同じだよ。
お前の傍にいてもいいのか、わかんなくなってたんだ…。」
「…沢松…?」
「お前はオレにとって何やってもかなわない奴で、オレのことなんかどうでもいいのかって、思ってた。」
「…いつ、言ったよ…んなこと…。」
「勝手に思い込んだ。お前と一緒でな。」
「…オレは…お前が嫌そうな顔、するから…。
オレはお前といて嫌な顔して、ないぞ。」
「……不安だったからな。」
「ばっか…。」
天国の腕がおそるおそる、という風に沢松の背にすがりついてきた。
「なあ。天国。
一緒にいていいか?
ちゃんと言ってくれ。」
「……っお前こそ。」
「いーから。お前先に言えって。」
「何で…。」
「お前の方が泣いてばっかでガキだからな。」
「……ぶっころ…。」
「おう。」
天国は涙でぐしゃぐしゃになった顔を沢松の肩に押し付け。
小さく言った。
それは小さな声だったけど、確かに。
耳に届いていた。
「ずっと いっしょに いて くれ」
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「…そんなことがあったんですか。」
「そうっすよ。でもうまくいったみたいで…ほっとしてるっす。」
「面白いもんも見れたしなー。沢松あの顔写メってねーかな。」
「いや、それはないっすよ。」
KYにも程があるっす。
「ずいぶんと回り道をしてたんですね、お二人とも。」
心配性のチームメイトたちの視線の向こうには。
一目で分かるほどの、
仲のいい
相棒同士が笑っていた。
end
よ…ようやく終わりました…!!ラストはだいぶあっさりしてて物足りないところもあるかと思われますが…。
私にはこれが精一杯のようです。
「友達じゃない」状態から始めてみた沢猿、いかがでしたでしょうか。
不自然きわまりなかったかと;;
河豚さま、何年もお待たせして本当に本当に申し訳ありませんでした!!
素敵なリクエスト本当にありがとうございました!!
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